参考文献などは書かなかったので
もし「勇者ヴォグ・ランバ」に出てくる要素についてもっと知りたいという方がいらしたら、このあたりをおすすめします。
意識の話
哲学的ゾンビとか、意識を記述できるのかとか、意識にまつわるテーマはwikipedia:意識のハード・プロブレムに出てくる用語や人名からたどっていけると思います。
ただこの作品全体は最新科学で意識の本性にせまるというようなテーマではないので、ペインフリーのシステムがらみでない場面では意識はカントの「理性」ぐらいの古典的なイメージで話作りしていました。“認識の主体”程度の意味でしょうかね。
記号うんぬんの話
人間は記号の乗り物と言える、という話はリチャード・ドーキンスによるミーム論(wikipedia:ミーム)ですね。人間は遺伝子の乗り物、とした本「利己的な遺伝子」に、同時に出てきます。
意識は物理世界と記号世界を扱うというくだりは、ロジャー・ペンローズの提唱する概念をネットで聞きかじって、だったかと思います。唯心論では、扱えるのは記号だけということになるのでしょうか。
社会学的な話
私がよく拝見しているブログにheuristic waysがありまして、人が今当たり前のように存在する私たちに至るまで近代化・現代化していく流れを、書物やメディアの紹介と考察を交えて書かれています。
11話の社会論の一部はこちらの記事からヒントを得ています。
だから、たとえばふだん当たり前のように買っているタバコがないと、「日常の時間」が中断される。そこから「思考」が始まる。田崎英明氏は、「思考」とは「日常の時間の切断」であると言っている。《つまり、思考とは一種の戦争機械であり、哲学とは魂を内戦状態にすることなのである。すべての魂に内戦をもたらすこと、それが哲学の使命にほかならない。》
http://d.hatena.ne.jp/matsuiism/20110429/p1
余談ですが作者のid:matsuiismさんはコンビニ店員さんだそうで、7年コンビニ店員だった鷲崎健さんといい、私はコンビニ店員さんの言葉に心打たれることが多いみたいです。はてな村有名人のコンビニ店長さんの記事も良く見てます。
安全保障の話
私は「信長の野望」ファンでしたし、人間の自然状態のイメージが凶暴です。先ほどのheuristic waysさんの記事(J.L.バイヨック『サガの社会史』)で支配−被支配関係のない社会の話など読むと、シブサワ・コウの即時開戦ワールドとの差にショックを覚えます。
学生時代はわが友マキアヴェッリとか読んでいて、塩野七生の影響も大きいです。
というわけで、おすすめはリアリズムと防衛を学ぶさんです。『リアリズムと防衛を学ぶ』 の人気エントリーを読むと面白いですよ。
作者のid:zyesutaさん、プロフィールアイコンからして高屋奈月先生のファンなんでしょうか……意外です。私もフルーツバスケット全巻持ってますけども。
伊藤計劃関連
ヴォグ・ランバ関連の本はまず「ハーモニー」。そして発表順は逆になりますが「虐殺器官」。この2冊を読んだ段階でヴォグ・ランバを描き始めました。「伊藤計劃記録」に収録された「From the Nothing, With Love.」も、ハーモニーの解釈に影響すると思います。
古い自分のブックマークを調べてみますと、私が最初に読んでみたいと思った書評はこちらでした。「ハーモニー」から入ったんですね。
「全体主義」というユートピア――伊藤計劃『ハーモニー』(早川書房、2009年) : 一酔人経綸問答
あとこのブログで以前、伊藤計劃さんという小説家を知ったのは亡くなった後だと書いたのですが、訂正します。正確にはこちらの記事から日記を見に行っていたはずでした……。
単著もないのに〜2008年夏〜 この一年で単著を出した文化系はてなダイアラーをまとめてみる - YAMDAS現更新履歴
以上です。私が謎の電波を受信して描いたことと矛盾する記述がありますが寛大に看過してください。こうしてみると、「参考文献」というまとめには、もともとできないですね。