今月号の休載と幻想再帰のアリュージョニストについて

まず幻想再帰のアリュージョニストについて。一応お断りしますと私とは関係ない作品です。これははてブウォッチャーの方以外にはわけがわからないかと思いますが、某所で拙作を宣伝していただいたので、お礼もかねて布教に参加します。(ステマ

まあ、これがタダで読めちゃうのはすごいですよね。私は読むのがとても遅いので2章の途中までですが、人間性の解体や脳の機能拡張を平然と押し進めるグレッグ・イーガン伊藤計劃以降の「ライトノベル」というかんじです。ある意味、何万円出しても買えないんじゃないかなと思うような。

ネタばれになりますが、




面白いのは主人公が人工知能なんですね。作中では生身の人間と区別がつきませんが、「ハーモニー」の医療的監視システムWatchMeや、それを元にした「勇者ヴォグ・ランバ」のペインフリーのような、人間の複雑な思考まで代替してくれるようなシステムそれ自体が悩み、考えるストーリーなんです。拙著「辺獄にて」で、宇宙人の青鬼が「苦痛を製造したければバーチャルで再現しろ」と言われ「苦痛を感じるプログラムは人間同様だからかわいそう」という意味の返事をするシーンがありますが、それを大々的に表現されているような気がして嬉しいです。

世界観は全体像がわからないので(たぶん最後のほうでわかるタイプ)SF的なのかファンタジー的なのか判別がつきません。「異世界」が存在するファンタジーのように描かれていますが、すべて仮想世界で繰り広げられているポスト・ヒューマンの物語とも考えられるので。仕掛けや小道具でドラスティックな人間性の解体ぶりを見せつけロマンを感じさせてくれるところがSF的です。

一方、主人公が成長していく乗りやすいストーリーで「バガボンド」みたいなかんじもあります。ただし「天下無双」のような目標がないし、なんのイデオロギーも信じていなくて、ただサバイバルの力が欲しいというところから始まるのはいかにも現代風です。

作者の最近さんははてブユーザーさんですが、どういう方なんでしょう。私などが言うのもおこがましいのですが、小説技法をきちんと身につけた凄いエンターテナーというかんじです。だから未完のストーリーの途中で騒がれるんでしょうね。ライトノベル的お約束(というか中世騎士道ロマンス以来のお約束)もしっかり果たされていて、私はツンデレ好きなのでコルセスカが好きですね。

私は仮想世界というもの自体が新しいミームとして、人間にとってもポスト・ヒューマンにとってもより重要になると考えておりまして、なんだかそういうインスピレーションをビシビシもらえるなあと言う見方をしております。今後も楽しみです。


それで本日10/31発売の「月刊アフタヌーン」12月号の「白馬のお嫁さん」は単行本作業のため休載です。単行本はあちこち修正しているのですが、なんでここを?と思われたらすみません。ストーリーは大筋では変わっていないので、雑誌派のかたは気にしないでください。ページ数がかなり多いので価格は640円になりました。不徳のいたすところです。11/21発売です。表紙画像もこちらにちらっと上がってますね。お試し読みはこちらです。ではでは。

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