文章で伝わらない新作漫画のちょっとした苦労
「白馬のお嫁さん」1巻発売が明日に迫りまして、ここ数日は月刊アフタヌーンのサイトで特集を組まれるなどいたしました。編集さんも力を入れてくださっているので私もひとつ記事をアップいたします。今の漫画の売り方のちょっとした苦労話として。
まず今作「白馬のお嫁さん」は、最初の4ページを読んでいただくと興味がある方とない方にスパッと分かれるような漫画なんです。
10ページも読めばもうだいたいどんな趣向なのかも伝わるんですが、それがもう非常に大変なんですね! なぜならユーザーさんはまず文章とワンカットで、試し読みに進むかどうか決められるからです。
今作の文章での伝わらなさを伝えるためにわざと言葉で説明しますと……
「新機軸の男女逆転もの」。近未来の日本で「産む男」が登場。見た目は少女ですが文字通り子どもが産める男で、気弱な男子高校生といっしょにお嫁さん探しをします。*1
なんかこう…作品に対する期待が盛り上がらない感じではないでしょうか? 少なくとも「自分向けのストライクゾーンに入ってるかんじはしない」ような。ヘタをすればひどい悪趣味にとられてしまうと思います。
一応、実際の漫画はこんな雰囲気です。
本当はですね、こういう簡単な紹介ではちょっと突飛で、でも「あの作者みたいな」とか「あの作品と似たような」と絶妙に臭わせられるわかりやすさがいいんです。情報がみなさんの頭の中で組み立てられて、作品の全体像がなんとなく完成して、面白そう!って思ってもらえるような。*2でも今作はそうなってなくて、ネット上の簡単な紹介で読むかどうかを決められる際にちっともアピールできないんですね。突飛すぎるんですよ。
例えると「冷やし中華」がはじめて発明されたとき「冷たいラーメンですよ。」と言葉で説明しなければいけないかんじです。*3
字面ではあまりおいしそうではなくて、下手をすればゲテモノあつかいです。まだ「冷やし中華ファン」という人がいない状態なので、ファンを増やすにはとにかく口に入れて食べてもらわないといけないわけです。
どこの商品開発者も言ってそうなお話ですが、漫画の世界ではそういう新規参入のために「雑誌」というお助けシステムがあるわけです。
ありがたいことにアフタヌーン誌でファンになってくださった方々は、twitterなどで「産む男!」「産む男!」と話題にしてくださるんです。けれども「ほうほう、産む男とな。」と応答される率はたぶん低くて……まわりから「なんか変なこと言ってる人」あつかいされていたら、本当にすみません! たぶん、漫画での産む男を頭の中でイメージされているあなたが思うよりも、周囲からは気もち悪がられていると思います! だって「産む男が…」って唐突につぶやく人ですよ? 私は、友達が減らなければいいなと思ってました。今まで黙っていて本当にごめんなさい!
……ですからこの漫画の宣伝では「嫁取り」のほうをクローズアップしたりしてるんです。いくら「冷やし中華です!」と言ってみても「冷やし中華ファン」はまだ存在しない状態なので、既存のチャーシューメンファンを狙って「冷製チャーシューメンです!」って言ってみるかんじですね。
いくら本当に冷製チャーシューが乗ってるからって言っても、チャーシューメンのファンって、冷製も好きなのか?って考えると非常に苦しい作戦です。でもしかたないんです。今作は漫画ジャンルで「SF嫁取りラブコメ」などとも言っていますが、SF好きの人って嫁取り漫画を読みたい層なのかっていうと……よくわかんない……でもしょうがないの!
という、「漫画雑誌から文字情報で選別される媒体にプロモーションがシフトするにつれて、文章でイメージしにくい漫画はやはりちょっとますます風向きが悪くなっているだろう」というお話でした。
雑誌で一番人気になってから言えって話ですけどね! でも「産む男」っていうだけでわーって目を引く時代にならないかなー。
なんだか文章がくだけてきちゃいました。じゃあ編集部に許可をもらってますので、最初の10ページをここにモアイから転載します。よろしければご覧になってみてください。ご清聴ありがとうございました!
- 作者: 庄司創
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (9件) を見る